ベストを尽くす採卵の戦略

最短期間で質の良い(生まれる)胚を獲得するために、ベストを尽くす採卵とはどのようなものか考えてみたいと思います。

① 適切な調節卵巣刺激法の選択
② トリガーはデュアル(GnRH点鼻+HCG5000単位)
③ 受精は初回はsplit(IVF+ICSI 1/2ずつ)精液データ不良ならICSI(必要に応じmodified ICSI)
④ All cryo (全胚盤胞凍結)

このような流れです。一つずつ説明していきます。

① 調節卵巣刺激法

副作用を出さない範囲で、できるだけ多くの卵子を採るという姿勢です。
ざっくり分けると下記のような形になります。今までの治療歴も参考に決めていきます。

39歳以下 40歳以上
AMH>2.0ng/ml アンタゴ アンタゴ
1.0~2.0 アンタゴ or ロング アンタゴ or ショート
1.0未満 アンタゴ(CC+HMG) アンタゴ(CC+HMG)

このように、8割程度はアンタゴニスト法で行っています。アンタゴニスト法かアゴニスト法(ロングかショート)かは、やってみなければどちらが合うかはわかりませんが、初回はほとんどアンタゴニスト法で行います。理由は、アゴニスト法ではE2値が上がりやすくOHSS(卵巣過剰刺激症候群)になりすいのと、アゴニスト法では次の採卵まで2周期以上あけたほうがよいので、うまくいかなかった場合に時間が経過してしまうためです。

・卵巣予備能普通~高い場合(AMH>1.0ng/ml)
副作用が出やすいのでアゴニスト法はできるだけ避けます。質を改善する必要があれば、前周期~卵巣刺激開始までジュリナ(卵胞ホルモン)1週間、または低用量ピルを3週間投与することもあります。ただし採れる卵の個数が減ることもあるため、必要な場合にしか行いません。

・卵巣予備能の低い場合(AMH<1.0ng/ml)
CC-HMG法では、注射に加えて月経開始3日目から5日間クロミッド(またはフェマーラ)の内服を行います。内服をかぶせたほうが卵胞の数・質ともに上昇することが多いです。
採卵2回目以降では、以下の選択をオプションとして考えます。

  • 刺激が合わない(胚盤胞できない)場合:CC内服中は注射を1日おきorなしにするなど、低刺激法にします。
  • 刺激が合っている(胚盤胞できる)場合:1周期に2回採卵を行うこともできます。(DuoStim法、詳しくはこちら
    採卵後5日目からまた刺激開始して、月経中に採卵します。その後また5日あけて刺激開始します。2倍のスピードで良好胚を集めることができます。

② 採卵前のトリガーは一方が合わない人がいるため、両方使うのがベストです。

③ 基本的考えとしては、不要なICSIは行わないということです。ICSIでは卵子の活性化が起こりづらく、胚盤胞が得られない人がいます。精子が少ないか、初回のIVFで受精なし、または多受精が多い場合のみ、ICSIの適応となります。
ICSIで胚盤胞ができない場合には、modified ICSI(卵子の活性化を促すICSI)を行っています。ただし弱い卵子は変性しやすいといったリスクなどもあるため、半数のみで有効性を検討し、以降は必要な場合のみ行います。

④ 38歳以上では採卵を繰り返し、胚盤胞をいくつか貯めてから移植に入ります。妊娠して流産に至った場合、次の採卵まで時間を空けなければならないからです。
貯める胚盤胞の個数は、38~40歳:3個、41~42歳:5個、43歳以上:8個が目安です(参考:こちら)。
PGSが一般的になれば、染色体数が正常な胚盤胞が1~2個得られてから移植、という流れになると思います。

以上になります。この中で一番重要なのは①です。今ある卵巣は変えられなくとも、出てくる卵の質は刺激法によって変えることができます。結果をふまえ、よく考えて卵巣刺激法を決定することが重要です。
②③については、実際にはここまで徹底していません。今までの治療で胚盤胞が得られていれば変更する必要はありませんが、そうでなければ検討の余地があります。
また、妊娠だけでなく「必ず出産する」ことを目標にするのならば、繰り返し新鮮胚移植を行うのではなく、ある程度の治療期間を見据えて、治療は計画的に行うのが近道であると思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする