サプリメントは有効なのか?

妊娠のためによいと噂されるサプリは様々ありますが、本当に必要なのでしょうか?
多くの方が、効果はわからないけれど何かできることがあればという気持ちで飲んでいるのが現状だと思いますが、女性側に投与して、妊娠に効果があるという医学的な根拠のあるものはDHEAビタミンDだけです。

DHEAについては、多くの医師がブログなどで話題にしているので説明はそちらにゆずりますが、卵巣予備能の低い群(採卵数5個以下が目安)では、妊娠率・着床率の上昇、前胞状卵胞数の増加、流産率の低下が示されています[1] [2]。卵巣予備能が普通の群を対象とした研究は少ないですが、流産率の低下や妊娠率の上昇が得られたという報告があります [3]

また最近話題のビタミンDについてですが、妊娠に有効とする主張は、後方視的な検討と、In vitro(=試験管内。生体内の反対。)の検討のみです[4]。ただし、多嚢胞性卵巣(PCO)の患者さんを対象とした場合、ビタミンD投与でインスリン抵抗性が改善されることや[5]、小規模な検討ではありますが、卵胞成長が促進され妊娠率が上昇することが示されています [6] [7]
それ以外のサプリメント、例えばLカルニチンや、コエンザイムQ10に関しては、妊娠に有効とする報告はありません。

基本的なことですが、ある条件Aが、Bに対して有効であることを示すには、最も強い根拠となるのはAを加えたA(+)の群と加えないA(-)の群を比較して、A(+)群ではBが増えたという結論です。A(-)群とA(+)群、A(++)群の3点かそれ以上で比較して、連続的な相関が認められればなおよいです。これは前方視的検討であり、ランダム化比較試験(RCT)がこの代表的なものです。
前方視的検討は、「未来は操作できない」という前提のもとに成り立っています。二つの群に振り分ける際に、この時点で何らかの操作を加えようと思ってもできません。結果は予測できないからです。
反対に、後方視的研究では、二群を抽出する際に、データには反映されない何らかの因子を加味して選ぶことが可能です。また、A以外の因子の影響を排除することができない、という点も重要です。
例えば、血中ビタミンDの濃度が高い群で妊娠率が高かった、という結果があったとします。これを理由に、ビタミンDが高いから妊娠率が高かったのだとは言えません。ビタミンDが高い群では、食生活に気をつけていたり、サプリメント全般を多くとっている人が多かったりして、ビタミンD以外の他の要素にも違いがあった可能性が大きいからです。よって、後方視的検討の結果は、明確な根拠にはなりません。

また、In vitroの実験は、物質同士の直接的な作用を検証するのにはよいですが、生体内では培養環境とは全く条件が異なります。物質レベルもしくは細胞レベルで見られた現象が、生体内でも起こりうるという確証はありません。

ですから、現時点で万人にすすめられるサプリというものは、はっきり言ってありません。卵巣予備能の低い患者さんと、若いのになかなか質の良い卵子が得られない患者さんにDHEAを、PCOの患者さんにはビタミンDを処方する、というのが現実的な考えです。

なかなか治療がうまくいかない場合、患者さんなりに原因をいろいろと考えると思います。しかし、適切な治療が行われていて結果が出ないのであれば、治療が悪いのでも、患者さんの行いが悪いのでもありません。それが現実なのです。
しかし、何かできることがあればしたいと思うのが人間です。その心理に漬け込んで、様々なビジネスが存在します。「栄養のせい」にしようというのがサプリメントの販売です。「血流のせい」にしようとするのが、様々な冷え対策グッズです。
こういったものに頼らなくとも、当院では30代であれば採卵2回までにほとんどの患者さんが妊娠されています。この結果が全てです。どうか、こういったビジネスに踊らされないで下さい。

もちろん、医学的な根拠までは得られていなくても、有効である可能性を信じていろいろとトライしてみるのは悪いことではありません。ただし、忘れてはならないのは、個人でできることに比べれば、卵巣の刺激方法を変えたり、活性化が起こるようにトリガーを変えたりといった医学的な介入のほうが、はるかに効果的であるということです。

また、予防医学的な考えで、健康的な食事をとり栄養バランスを整えることは、卵の質を低下させないことには意味があるかもしれません。生活習慣や食事など、複数の因子が関与するものについては、有効性を検証するのは難しいので、良い状態にしておくに越したことはないと思います。ただし、治療と予防は異なりますので、はっきり区別して考える必要があると思います。

参考文献

[1] Zhang M, Niu W, Wang Y, et al. Dehydroepiandrosterone treatment in women with poor ovarian response undergoing IVF or ICSI: a systematic review and meta-analysis. J Assist Reprod Genet. 2016;33(8):981-991
[2] Gleicher, N., Ryan, E., Weghofer, A., Blanco-Mejia, S., and Barad, D.H. Miscarriage rates after dehydroepiandrosterone (DHEA) supplementation in women with diminished ovarian reserve: a case control study. Reprod Biol Endocrinol. 2009; 7: 108
[3] Tartagni, M., De Pergola, G., Damiani, G.R., Pellegrino, A., Baldini, D., Tartagni, M.V. et al. Potential benefit of dehydroepiandrosterone supplementation for infertile but not poor responder patients in a IVF program. Minerva Ginecol. 2015 May 27; 67: 7–12
[4] Belenchia, A.M., Tosh, A.K., Hillman, L.S., and Peterson, C.A. Correcting vitamin D insufficiency improves insulin sensitivity in obese adolescents: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2013; 97: 774–781
[5] Jia X-Z, Wang Y-M, Zhang N, et al. Effect of vitamin D on clinical and biochemical parameters in polycystic ovary syndrome women: A meta-analysis. J Obstet Gynaecol Res. 2015;41(11):1791-1802
[6] Rashidi B, Haghollahi F, Shariat M, Zayerii F. The Effects of Calcium-Vitamin D and Metformin on Polycystic Ovary Syndrome: A Pilot Study. Taiwan J Obstet Gynecol. 2009;48(2):142-147
[7] Firouzabadi R dehghani, Aflatoonian A, Modarresi S, Sekhavat L, MohammadTaheri S. Therapeutic effects of calcium & vitamin D supplementation in women with PCOS. Complement Ther Clin Pract. 2012;18(2):85-88

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