妊娠率診断ツール

アメリカのSART(生殖補助技術学会)のホームページに、“What are my chances with ART?(体外受精による私の妊娠の確率は?)”というページがあります。これは、アメリカ国内で2006年以降に行われた32万人、50万周期のデータに基づいて、体外受精による妊娠の可能性をはじき出してくれるツールです(アメリカで一般的な治療を行った場合なので、いわゆる高刺激で採卵した場合の確率になります)。

あくまでも統計に基づいた計算ではありますが、現実的な可能性を知っておくというのは、治療を行う上での参考になるかもしれませんね。

使い方を簡単に説明しておきます。

まずはじめに、年齢・身長・体重・妊娠回数・37週以降での出産回数を入力します。身長は小数点をつけて入力して “meters” を選択、体重は “kgs” を選択。(”meters”ではたまにバグが出るようですが、その場合 1feet=30.48cmで換算して入力)

SART妊娠率診断ツール-小柳由利子の小部屋

次に、「Diagnosis(診断)」の項目にチェックをします。それぞれ訳をつけておきます。

  • I don’t know my diagnosis 自分の診断が分からない
  • Male factor 男性不妊(精子数や運動率の低下)
  • Endometriosis 子宮内膜症
  • Ovulation Disorders (including polycystic ovarian syndrome) 排卵障害(PCOSを含む)
  • Diminished Ovarian Reserve 卵巣機能低下(低AMHなど)
  • Uterine factors (including fibroids) 子宮因子(子宮筋腫など)
  • Tubal Ligation 卵管結紮後
  • Tubal Hydrosalpinx 卵管留水腫
  • Any other tubal problem 上記以外の卵管の問題(卵管閉塞など)
  • Other (including cancer) その他(癌を含む)
  • Other (not infertile) その他(不妊に関係ない理由→着床前診断希望など)
  • Unexplained (no reason was found for either partner) 原因不明(検査の結果双方に異常なし→年齢因子などはこちらになります)

最後に自分の卵か卵子提供の卵かを選びます。卵子提供がこれほど一般的な選択であることが驚きですね。

全部入力したら、左下のCalcurate my success rateをクリック!

さらに、もっと下の方へいくと、2周期・3周期治療を行った場合の累積出産率や、2個胚移植を行った場合の出産率・多胎率も表示され、1個胚移植を2回行った場合と2個胚移植を1回行った場合の出産率・多胎率の比較もできます。

卵子の老化や、多胎のリスクについて情報提供する意味でも、とても貴重なツールだと思います。

さて、SARTとは日本のJISARTのようなもので、生殖医療の技術を高いレベルに維持することを目的とした組織ですが、アメリカ国内でARTを行う施設(2010年時点で474施設)の90%以上が加盟しているという点が、日本とは違います(日産婦登録施設約600施設のうち、JISARTに所属しているのは30施設のみ)。また、ホームページには、加盟施設全体の治療成績のほか、患者向けの治療に関する情報が豊富に提供されています。

不妊治療に関する専門的な情報がオンラインで得られるサイトは他にも複数あり、NPO団体によるRESOLVEというサイトでは、卵子提供や養子縁組、または子供をもたない選択など、より患者に近い目線で、治療を考える上での総合的な情報を提供しています。また、ASRM(アメリカ生殖医学会)による患者向けページReproductiveFactsでも、主に動画やFAQsといった質問形式で治療に関するわかりやすい説明を行っています。

病院の選択に関しては、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の生殖医療関連のページで、アメリカ国内のほぼ全てのクリニックのART治療成績が公開されており、ダウンロードすることができます。

このような、治療の透明性や情報へのアクセスのしやすさは、日本も学ぶべきところだと思います。治療成績が公開されていることにより、あまりよくない周期では採卵や移植が延期になったり、安易に卵子提供をすすめたりといった弊害も考えられますが、妊娠の可能性の低い治療が繰り返されることはないといったメリットも大きいと考えられます。

現在の日本における不妊治療の現状は、病院数があまりにも多く、治療が多様化しすぎており、また公平な視点で専門的な情報を得られる手段もないため、患者さんにとって治療・病院の選択が非常に難しいことが問題だと感じています。学会が中心となって、日本の現状に合ったガイドラインを設定すること、毎年ではないにしても、ある程度のスパンを切って各クリニックの治療成績を公表することが、患者さんへの利益につながるのではないかと思っています。

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