近況&エビデンスについて考える

更新が遠のいてしまってごめんなさい。最近患者さんからも、メール相談からも「早く更新してほしい」とのリクエストを頂き、嬉しい気持ちとともに、責任感を感じております。
近況についてですが、実に個人的なことで申し訳ないのですが、ホームページ作成のときにコンテストで頂いた副賞で、現在アプリ制作の勉強をしています・・・
無料で受講できるし、妊活アプリでも作れたら患者さんの役に立つかな?という軽い気持ちで始めたんですが、完全にエンジニアの世界・・・。

いくつもの壁にぶちあたっていますが、スクールも今月いっぱいで終わりなので、できるところまでやってみようと思っています。
大変とはいえ、いくつになっても新しいことを知るのは刺激に満ちていて、楽しいものです。発明というのは境界領域から産まれるともいいますし!不妊治療にも、役立てられるような発想が得られたらと思っています(汗)。

他の分野に触れてみてつくづく思うのは、不妊治療というのはとても難しい分野だなということです。多くの学問は、必要な知識の量が膨大であったとしても、問題に対してはある程度皆の意見が一致するような解答があると思います。

しかし、不妊治療には多くの場合正解がありません。この難しさを分解してみると、「診断の難しさ」と「治療の難しさ」に分けられると思います。診断の難しさは、「見えない」ことが原因であると思います。

例えば医学のほかの分野であれば、問診→内診→採血や画像診断で、ある程度の診断ができますが、不妊は生理不順など以外は基本的に無症状で、また卵管の働きや受精しているか?といったことは診察ではわかりません。採血でわかるのも、ホルモン値やAMHの数値程度です。しかし、体外受精・顕微授精ができるようになったことは画期的で、受精しているかどうかや、卵の質が外で見てわかるので、診断としても有効ですし、多くの場合は治療としても有効です。最終的には、「卵の質」か「着床」のどちらかが問題となるのですが、これが「治療の難しさ」につながります。

卵の質については、改善することができないので、いかによい卵を出すか、ということになります。しかし刺激に対する結果が人それぞれ異なるので、画一的なやり方ではうまくいきません。例えばPCであれば、誰が持ってる機器であっても同じ信号を入力したら同じ反応が返ってきます。エラーが出てきたとしても、予期せぬエラーというのはまれであって、大体はトラブルシューティングが可能なわけです。人間はもっと複雑なので、人それぞれ症状が異なったり治療の反応性は異なりますが、医療の他の分野ではおおよそ治療方針は確立しています。しかし卵巣についてはさらに複雑なためマニュアル通りにはいかないのです。

また、着床については、そもそも着床の機構自体がまだ解明されていません。最近、着床の窓の問題や、免疫的な拒絶が関わっていると考えられ、色々な治療が試されていますが、現時点で治療法として確立されたものはありません。

こういった手探りの中で、何を指針として治療法を決めるかというと、論文です。「エビデンス(根拠)」に基づいて治療を行うわけですが、この「エビデンス」と一言で言っても、そこには様々なレベルがあります。以下に、学会がガイドラインを作成するにあたってのエビデンスレベル分類を示します。

<エビデンスレベル>
1a:ランダム化比較試験のメタアナリシス
1b:少なくとも一つのランダム化比較試験
2a:ランダム割付を伴わない同時コントロールを伴うコホート研究(前向き研究,prospective study,concurrent cohort studyなど)
2b:ランダム割付を伴わない過去のコントロールを伴うコホート研究(historical cohort study, retrospective cohort studyなど)
3:ケース・コントロール研究(後ろ向き研究)
4:処置前後の比較などの前後比較,対照群を伴わない研究
5:症例報告,ケースシリーズ
6:専門家個人の意見(専門家委員会報告を含む)
日本肝臓学会のホームページより引用)

昨今多くの医師がブログなどで論文を紹介しているため、患者さんもエビデンスに触れる機会が多いと思うのですが、これには功罪があって、ある一つの論文を紹介してしまうと、あたかもそれが真実であるかのように錯覚してしまいやすいという危険もはらんでいます。

特に最先端の治療に関しては(例えばPGSなどはわかりやすい例です)賛否両論があって、それらを総合した上で本当に効果的なのかといったことが議論されるのです。だから、患者さんにも、ある一つの記事を読んで、それを鵜呑みにするのではなく、そういった意見もある、という程度に考えてもらったほうがよいと思います。

ガイドラインで推奨されるレベルには、上記の1か2の報告があることが条件になります。後ろ向き研究や症例報告は、根拠としては乏しいということ、患者さん同士の経験談は、治療以外の部分の安心感にはつながったとしても、治療の方針決定にはあまり参考にならない(気にしないほうがいい)ということをお伝えしておきたいと思います。

かくいう私も、ブログで偉そうにいろいろ書いていますが、私のブログの内容はエビデンスレベルで言うと6なので、参考程度にとどめて下さい(笑)。ただ、論文そのままを載せるより、解釈を加えたほうが伝わりやすいかなと思いますので、私個人のフィルターを通したものになってしまいますが、わかりやすい説明を心がけていきたいと思っています。

こういった内容について説明してほしい、といったご要望があれば、お問い合わせからリクエスト下さい。時間がかかってしまうかもしれませんが、まとめてみたいと思います。よろしくお願いします。

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