年齡と卵の妊孕性の関係

前回治療のリミットということについてお話しましたが、年齡による卵の質の変化に関する説明として、2017年5月に日本の加藤レディースクリニックから報告された論文を紹介したいと思います。(Fertility and Sterility,107(5), 1232–1237

この報告では、自然周期採卵後の単一胚移植の結果を8年間にわたって調査し、卵巣刺激の影響を受けない、自然な状態での卵の質を評価しました。この結果によると、1出産あたりに必要な卵子の数の平均は、35歳未満では約4個とほぼ一定で、それ以降減少し続け38歳で5.9個40歳で10.9個42歳で22.7個43歳以上の平均では97.4個でした(赤枠内)。(Supplemental Tableによると、43歳で38.0個、44歳で119個、45歳で116個となっています。)

年齡と生児獲得率-小柳由利子の小部屋

これを卵子1個あたりの産まれる率として換算したのが黄色の枠線の部分で、グラフで示したものが以下になります。とてもわかりやすいデータです。年齡と卵あたり生児獲得率-小柳由利子の小部屋

この論文の評価すべき点は2点あって、一つ目は、純粋な卵の質を評価したという点です。体外受精では卵管の影響を受けないので、卵だけに注目することができ、また卵巣刺激を行っていないので、自然な状態での卵の妊孕性を評価することができます。自然周期の採卵はほとんど日本でしか行われていないので、これは世界で初めての報告になります。

もう一つは、反対に、自然周期採卵の限界を示したという点で重要だと思います。これは、クリニックにとってはある意味勇気ある行動です。このデータを見ると、42歳以上で、自然周期の採卵を行おうとすれば、妊娠するのに途方もない時間がかかるであろうことがわかります。注意したいのは、このデータで扱っている卵は、あくまで受精ができて移植に至った卵であり、実際には未熟や空胞であったりする場合が採卵全体の約半数あるということです(本論文中にはデータはありません)。年齢が高くなればなるほど、自然周期の採卵がいかに非効率的となるかがわかると思います。

さて、では治療のリミットということを考えた時、どのような解釈ができるでしょうか。

このデータを見て、間違いやすいのは、42歳での1出産あたりの卵子の数の平均が22.7個だから、23個卵を集めれば半分の人が妊娠できるのではないかと考えてしまいがちですが、そういうことではありません。もちろん自然周期と刺激周期は違うので、単純に比較はできないということもありますが、それだけではありません。これは個々人の治療に必要な卵子の数を示したデータではないのです。

23個に1個産まれる卵があったという場合、その23人に1人の人が毎回ほとんど良い卵ばかり出していて、それ以外の22人は毎回ほとんど良くない卵ばかり出しているという可能性だってあります。極端な例ですが、そういった個人差が含まれる可能性があるということです。

そういう意味で、数字が大きくなってくる43歳以上では、前回の記事で説明した「臨床上の特徴」というものが、妊娠の見込みを考える上では重要になってくるのではないかと思います。

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