移植周期~妊娠中のタクロリムス内服について

前回の記事から、1年以上経ってしまいましたm(_ _)m
最近は専らツイッターでつぶやいております。気軽に投稿できるのと、反応が得られるので嬉しいですね。
ただ、文字数制限と修正ができない点、過去の投稿が追いにくいという点は難点です。
ある程度まとまった記事は、こちらのほうに残していきたいと思っています。

さて、タクロリムス内服について、前回の投稿後、多くの方からご質問を頂きました。
質問の内容は、
・飲むべきか否か。
・妊娠中も内服を継続するべきか。
の2点です。

飲むべきかどうかの判断はとても難しいです。Th1が高い人は全員飲んだほうがよいのかというと、そういうわけでもありません。
Th1が20くらいあっても、普通にタクロリムスを飲まずに妊娠継続する人も大勢います。

例えばTh1が高い人が風邪を引きにくいかというと、そういうわけでもないようですし、「抗原として認識されるかどうか」ということが一番の問題になってきます。
Th1が低くても、抗原がやってきたら反応性に上がるということもあるし、Th1が高くても抗原として認識されなければ拒絶はされないのです。
つまり胚の側の違いも大きいのではないかということです。
仮説ですが、PGS(PGT-A)を行った胚では通常の胚よりも傷を受けている分抗原として認識されやすい可能性があり、Th1が高くない場合もタクロリムス内服の適応になるのではと考えられます。

今の時点での当院の方針としては、反復着床障害のときに限ってTh1,2採血を行う→Th1が高ければタクロリムスを処方する。
妊娠成立後は、新たに抗原として認識されるきっかけはないと考えられるため、移植前2日~移植後7日の10日間で内服は中止としています。
Th1が高くて妊娠中に流産を繰り返した方は、1名のみです。ただ、この原因もTh1だけが原因なのかどうかは定かではありません。

Th1が高い群で流産率が高いとする論文の理由として、Th1の数値と胚の染色体異常の割合に関連がある可能性も否定出来ないと思います。
これを明らかにするには、PGS(PGT-A)で正常と診断された胚を移植して比較するとことが必要です。
その意味でも、PGS(PGT-A)は有意義な検査になります。
2018年ESHREの学会報告で、「Th1高値群では、妊娠中にタクロリムスを内服し続けしても継続妊娠率は上がらなかった」という発表があります。
これも、上記の考えを裏付ける可能性があります。

次に妊娠中のタクロリムス内服についてですが、基本的に必要ないと考えられますが、どうしてもという希望がある場合は処方しています。
安全性については、添付文書の資料を確認したところ、実験動物では、主に3.2mg/kgの高濃度投与群で、胎児の低体重や心循環器・骨格系の奇形が認められました。
人間に換算すると、約15mg/dayの内服ということになるので、5倍程度の投与になります。
また、ヒトでは生体肝移植後の投与について文献がありました。こちらも、低体重や早産のリスクが多少認められていましたが、対象が健康な人ではないので、全く同じ解釈はできません。
参考までに、不妊治療で一番多くタクロリムスを処方していると思われるクリニックの報告によると、妊娠34週までの投与で、今までに有害事象が起こった例はないとのことです。
ほぼ安全に使用できる、と考えて問題ないのではないかと思います。

まだまだ分からないことが多いテーマではありますが、はっきりと言えることは
・何度もTh1,2採血を行うことにあまり意味はない
・Th1が高いからといって必ずしもタクロリムスを内服しなければならないわけではない
・反復着床障害の一部にはタクロリムスは有効
・妊娠中にタクロリムス内服を継続する必要性は低いと考えられるが、内服したとしても問題はない

というのが現時点でのまとめになります。

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