PGT-A目的の胚融解・再凍結の影響について

着床前染色体スクリーニング(PGS=PGT-A)を行うために、一度凍結した胚を融解して生検し、再度凍結することによって、胚へのダメージはありますか?という質問をいただきましたので、3つの報告を引用して検討したいと思います。

過去には2つの論文があり、簡単にまとめると以下のようになります。

① Reprod Biomed Online 2014; 29: 59-64

グループ1(n=85): 生検→凍結→融解後胚移植(生検1回、凍結1回)

グループ2(n=9): 凍結→融解→生検→再凍結→融解後胚移植(生検1回、凍結2回)

2つのグループ間で、移植前の胚の生存率 (98.3% vs 100%)、着床率・妊娠率・継続妊娠/出産率に差を認めませんでした(継続妊娠/出産率=54.0% vs 50.0%)

この報告は、nが少ないことに注意が必要です。また、グループ2には緩慢凍結法を用いた群も含まれていましたが、凍結法として劣るため、ここでは省いて記載しています。

② Fertil Steril 2017; 108: 999-1006

グループ1(G1, n=2130)生検1回、凍結1回

グループ2(G2, n=34)生検1回、凍結2回

グループ3(G3, n=29)生検2回、凍結2回

通常、1回目の生検で結果が得られなかった場合(細胞が少なかったなど)に、2回目を行います。

胚の生存率はG1, G2, G3の順に下がり(98.4, 97.4, 93.3%)、G1とG3の間に有意差を認めました。
臨床的妊娠率は、G1, G2, G3の順に下がり(54.3, 47.1, 31.0%)、G1とG3の間に有意差を認めました。

比較したいG1とG2の間にはいずれも有意差は認めていませんが、生存率も臨床的妊娠率も低下しています。(生存していない胚は移植していないので、実際には胚あたりの妊娠率はもっと下がっているはずです)

③ 昨年2018年のASRMの報告集より、ある発表のデータを下記に載せたいと思います。
グループの内容は左から順に、
生検1回、凍結1回(n=1100)。生検なし、凍結1回(n=2102)。生検1回、凍結2回(n=73)、生検2回、凍結2回(n=11)となっています。

生存率をみると、3つ目、4つ目のグループでは低下していないことがわかります。

生検なしの群が一番生存率が低い理由は不明ですが、生検にAS(人工的収縮、針やレーザーで胚に穴を開けて脱水させる)に似た効果があることがわかっており、凍結前のASが不十分な胚が多く含まれていることが示唆されます。


一方、臨床データを見ると、3列目のわざわざ融解して検査を行った群のほうが、2列目の検査を行っていない(異常胚も含まれる)群よりも生産率が低くなっています。(年齢の中央値は34歳)
1列目と3列目を比較すると、融解後生検・凍結により生産率は約半分に落ちています。正常胚で、出産できるのが22%というのはあまりにも低いです。この施設の成績が悪すぎるだけの可能性もありますが、とても融解してまで検査をする意義があるとは言えません。

なお、4つ目の群で結果が良好なのは謎ですが、症例が少ないため何とも言えないと思います。

これら3つの報告を総合すると、結論としては、胚の融解後の生検・再凍結により、胚の生存率は大きくは変わらないが、妊娠率・出生率は下がるため、目に見えないレベルでのダメージを受けている可能性があると言えるのではないでしょうか。

つまり、PGT-Aを行うのであれば、新鮮胚で凍結前に行うのがbetterと考えます。

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