病院によって治療方針が異なる悩み。

診察室でゆっくり聞くことができない患者さんの声を聞くために、私はSNSなどで不特定多数の方々と接したりしているのですが、その中でやはりみなさん悩まれるのが、「病院によって治療方針が違う」「何を信じていいかわからない」ということです。
そこで、私なりの見解を示しておきたいと思います。

個人的な話で恐縮ですが、最近私は2か所の歯科医院を受診しました。
一つはいわゆる町医者。もう一つは自費診療を中心とした最新医療を行っている医者です。

5年ぶりの歯医者受診だったので、初期の虫歯が複数できていました。
一つ目のクリニックですぐに治療方針が立たなかったために、後日ネットで検索した
二つ目のクリニックを受診しました。そしていわゆる「殺菌」を中心とした治療を行い、日々のオーラルケアまで懇切丁寧に教えていただき、1回で治療が完了しました。

それなりに高額な費用を払いましたが、満足度の高い治療となった理由は、
①歯を削らずに済んだこと
②1回で通院が終了したこと
③翌日から、朝起きたときの口のネバネバ感がなくなったこと
+虫歯の進行が抑えられた(かもしれない)安心感

しかし、いろいろ調べた上で考えてみると、この殺菌治療はエビデンスとしては高くなく、
毎日使用する洗口液も、長期的な使用のデータはなく、発がんリスクなど安全性については未知数です。
自費診療は、有効性や安全性は確立しておらず、あくまで「自己責任で」選択するものなのだと実感した経験でした。

初期虫歯ごときと、人生を左右する不妊治療を並べて語るのは、不謹慎かもしれませんが、
不妊治療ではこのような「有効性が不明確」な治療がいかに多く行われているかということに気づかされます。
全てが自費なので、一体その中のどれが根拠があって、どれが不明確なのかという区別が
患者さんにはつきづらいと思いますが、クリニックによって治療方針が異なる内容は、以下の二つに分けられると思います。

・病院の経営方針で異なる内容(低刺激・高刺激、初期胚移植・胚盤胞移植など)

・根拠がはっきりしていないもの(タクロリムス・子宮収縮検査・子宮内フローラなど)

前者には、正解はあります。手に入る情報をもとに、自分の優先順位(費用・通院のしやすさ)などを総合して決定すればよいのですが、自分で判断のつかない場合は「よく勉強している医師」に相談して決めるのがよいと思います。

後者には、正解はありません。真の意味で不明確な治療はこちらです。

医師は主に自分の経験や考え方に沿って治療方針を決めるので、それぞれ方針が異なるのです。

本来、治療の効果が実証されるには、多くの年月がかかります。また、医学的な妥当性を証明するには「有効」とする1本の論文では足りません。生殖医療は、次々と新たな技術が登場する分野なので、どうしてもエビデンスが追い付かず、複数の施設で不明確な治療が先行していきます。「妊娠・出産」ということが医師にとっても患者さんにとってもあまりにも大きな希望なので、できることは何でもトライしたいという気持ちになることも、それを後押ししています。

しかし、実際にはこれら不明確な治療には「未だ答えはない」のです。治療というよりは、実験に近いかもしれません。実際に、研究として行われているということも多いです。

何を選択するのか。それは、患者さん次第です。幸い、不妊治療で行われる実験的医療に、大きな健康被害が危惧されるものはありません。ただ、効果としては定かではないので、無理して高額な費用を払ってまで行う必要はないと思います。また、新しい情報に惑わされて、卵の質などの本質的な部分を見失わない、ということも大切です。

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